業務連絡の手段として、LINEを利用している会社は多くなってきています。
総務省情報通信政策研究所が公表している令和4年度の調査によると、LINEの利用率は92.5%となっており、20代は98.1%、30代は96%、40代は96.6%という結果になっています。手軽に始められ、簡単に繋がることができるという利便性から、日常生活だけでなく仕事でも頻繁に活用するようになってきました。

しかし、どこにいても簡単に連絡が取れるということは、仕事とプライベートの境界があいまいになってしまうという欠点もあることになります。

今回は、業務連絡の手段として、LINEを利用する際の注意点について解説していきます。

私物のスマホに業務連絡を送ることは可能か?

グループラインを作り、そこで全体に対して業務連絡を流したり、個別にLINEで業務指示を出したりすることは良くあります。それ自体に違法性はなく、LINEでの業務連絡自体は特に問題ありません。業務連絡が単なる情報共有などであり、返信を強制したり具体的な業務の指示をするものでない場合は労働時間になりませんが、返信を強制したりすぐに対応しなければならないような場合、その頻度によっては労働時間になることがあります。

労働時間とは「使用者の明示又は黙示の指示により、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり、就業規則や雇用契約書に記載されている時間だけでなく、「業務を義務付けられた時間(明示の指示)」、「業務をすることを余儀なくされた時間(黙示の指示)」という実態があれば労働時間と判断されます。

勤務時間外であっても、場所的な拘束や時間的な拘束が強かったり、すぐに対応しなければ何らかの不利益を被るような場合、労働時間になるため注意が必要です。

LINEによる業務連絡をする際の注意点

仕事とプライベートの境界線があいまいになり、心身に大きな負担となる
⇒業務時間外に頻繁に連絡がくると、従業員にとってはストレスになってしまいます。さらに、返信や対応を強制しているような場合には、健康被害などにも繋がるおそれがあり、最悪の場合は退職してしまうリスクも存在します。業務時間外の連絡はなるべく控え、社内ルールを整備するなどの対策を講じておくことが望ましいでしょう。

常に情報漏洩リスクが付きまとう
⇒LINEは非常に便利なツールですが、スマホの紛失・宛先の間違い・アカウントの乗っ取りなどにより、会社の情報が外部に漏洩するリスクが大きいです。そのため、重要な内容や個人情報のやりとりなどに関してはLINEを利用することは避けるべきだと考えられます。

プライベートへの過度な干渉はパワハラになる
⇒緊急時など、どうしても連絡しなければならない時は仕方ないですが、プライベートへの過度な干渉はパワハラ(個の侵害)と判断され、慰謝料を請求されるリスクがあります。どのぐらい連絡したらパワハラになるのかについての明確な基準はありませんが、必要最小限に抑えておくべきでしょう。

管理職研修などを行い、意識をもたせる
⇒会社の上層部や管理監督者などに対して、労働法に関する勉強会を行い、意識をもたせることは非常に有効であると考えられます。業務の指示は基本的に上司から発信されるため、そもそも上司が発信しなければこのような問題は起こりにくくなります。

社内にてLINEを活用する場合には、社内ルールを明確にし、勤務時間外の連絡は必要最小限に抑えて仕事とプライベートを区別していくことが、人材の流出や健康被害などの問題を防ぎ、生産性の向上に繋がっていきます。

社会保険労務士 八尋 慶彦