収入を一定範囲内に抑え、家族の扶養に入りながら働いている方も多いですが、扶養範囲の具体的な内容について理解されている方はあまり多くないのではないでしょうか。例えば、税法上の扶養範囲と社会保険上の扶養範囲は要件が異なり、税法上の扶養ではあるが社会保険上の扶養ではないという場合もあり得ます。

今回は、社会保険上の扶養範囲について解説していきます。

税法上と社会保険上で扶養の範囲は異なる

被扶養者とは、経済的な援助が必要な家族や親族を言います。例えば、夫(会社員)と妻(専業主婦)の夫婦の場合、夫が被保険者で妻が被扶養者となります。社会保険上の被扶養者になると、社会保険料が発生しなかったり、場合によっては扶養者に家族手当が支給されたりするなど何かとメリットがあるのですが、家族であれば誰でも被扶養者になれるわけではなく、同居要件や収入要件など、一定の要件を満たしている必要があります。

《税法上の扶養範囲》
1年間の収入金額(1月に支払われる分から12月に支払われる分までの合計額)が103万円以下である場合、税法上の扶養家族となります(被扶養者に所得税は課されません)。
※この年収103万円には、通勤手当の非課税分は含まれません。非課税限度額を超える部分については年収に含めます。

《社会保険上の扶養範囲》
□ 被保険者と同居している場合
1年間の収入見込金額が130万円未満(※1、※2)かつ被保険者の収入の半分未満であり、被保険者の3親等内の親族に該当する場合、社会保険上の扶養家族となります(被扶養者に社会保険料は課されません)。
※1:この年収130万円には、通勤手当も含まれます。
※2:60歳以上の者又は一定の障害を有する者の場合は年収180万円未満となります。

□ 被保険者と別居している場合
1年間の収入見込金額が130万円未満(※1、※2)かつ被保険者からの仕送り額未満で、被保険者の配偶者・子・孫・直系尊属(父母や祖父母など)・兄弟姉妹である場合、社会保険上の扶養家族となります(被扶養者に社会保険料は課されません)。
※1、※2は上記と同じです。

つまり、被保険者の配偶者・子・孫・直系尊属・兄弟姉妹であれば、必ずしも被保険者と同居している必要はありませんが、それ以外の3親等内の親族の場合は、被保険者と同居していることが必須要件となります。

注意点

夫婦共働きの場合、年収の多い方の扶養になる
⇒夫婦共働きの場合には、年収の多い方の扶養になります。夫婦の年収が同程度の場合は、主に生計を維持している方の扶養になります。

週30時間以上勤務した場合、扶養から外れてしまう
⇒週の労働時間が30時間以上である場合、健康保険へ強制加入となります。協会けんぽの場合、繁忙期により1か月だけ超えてしまったというように臨時的な場合は直ちに外れることはありませんが、2か月以上連続して週30時間以上勤務した場合はその時点で扶養から外れてしまうため注意が必要です。
※特定適用事業所の場合は週20時間以上勤務すると外れる可能性がありますのでご注意ください。

75歳以上の者は健康保険の被扶養者になれない
⇒75歳以上の者又は65歳以上75歳未満で一定の障害を有する者は、後期高齢者医療制度の対象となるため、健康保険の被扶養者になることはできません。             

「年収130万円未満」とは、過去の実績ではなく未来1年間の見込額のこと
⇒社会保険の被扶養者となるための要件の1つに「年収130万円未満」があります。この130万円未満とは、過去の実績でなく、未来1年間の収入の見込額となっています。ただし、被扶養者となって2年目以降について、今までと勤務条件などに変更がない場合には、過去1年間の実績を未来1年間の収入見込額と仮定します。

社会保険労務士 八尋 慶彦