
日本年金機構が実施する社会保険の調査は、社会保険に加入している全ての事業所を対象として、3年~5年に1度の周期で行われます。この調査は、他の調査(監督署調査や均等室調査など)に比べて頻度が高く、どの事業所もどこかのタイミングで必ず当たることになります。
今回は、社会保険の調査について解説していきます。
社会保険の調査とは
社会保険の調査は、健康保険法第198条第1項及び厚生年金保険法第100条第1項に基づき日本年金機構(年金事務所)が実施するもので、社会保険の適用要件を満たす全ての事業所が対象となります。
社会保険の手続きが適正に行われているかどうかを確認するための調査で、指定された日に年金事務所へ出向き、1~2時間程度、様々な資料をその場で確認され、不明点などを質問されることもあります。
※規模が大きい会社の場合は、複数の調査員が調査にあたり、4~5時間程度かかることもあります。
※近年は新型コロナウイルスの影響で、年金事務所へ資料を郵送することも多いです。
《調査で確認される書類の例》
・出勤簿(タイムカード)※過去2年分
・賃金台帳 ※過去2年分
・就業規則
・雇用契約書
・労働者名簿
・社会保険の各種届出にかかる決定通知書
・源泉所得税領収書、源泉徴収簿
調査で確認される内容は?
社会保険の調査で確認される主な内容は以下の通りです。
① 社会保険の適用要件を満たす者を適切に加入させているか。
⇒1週間の所定労働時間又は1か月の所定労働日数が正社員の3/4以上である場合、原則として社会保険へ加入する義務があります。この「3/4以上」という要件は、契約より実態が優先されます。つまり、雇用契約書では週30時間未満の労働時間と記載されていたとしても、勤務実態が週30時間以上であり、それが繁忙期など臨時的・一時的なものでない場合は社会保険に強制加入となります。
※特定適用事業所に該当する会社の場合は要件が異なります。
② 社会保険の手続きが適正に行われているか。
⇒社会保険は強制加入であるため、要件を満たした時点で加入する義務があります。例えば、試用期間中や月の途中入社などの場合であっても、社会保険加入要件を満たしているのであれば入社初日から加入することになります。
その他、報酬額が適正に届けられているか・保険料の改定作業が適切であるか・賞与を支払った際の届出を行っているかなど、社会保険に関する手続き状況を確認されます。
社会保険の加入漏れや申請した報酬額に誤りがある場合、最大2年遡って訂正されることになります。当然保険料も追加で徴収されることになり、それ以外にも強制的に社会保険に加入することにより扶養から自動的に外れたり、年金が支給停止になることもあります。
調査を無視するとどうなるの?
結論から申し上げますと、社会保険の調査を無視し続けることはできません。社会保険の調査は法律に基づいて行われているため、調査の通知を無視し続けると、悪質と判断されて罰則(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)の対象となります。
通常、調査の通知は文書で送られてきます。そこには調査日や時間帯が指定されていますが、日程が合わない場合は無視するのではなく、通知文書に記載されている担当者へ連絡し、調査日や時間帯の変更を依頼するようにしましょう。また、出勤簿や賃金台帳などを作成していない場合に、虚偽の報告をしてはいけません。虚偽の報告であることが発覚した場合は罰則の適用があります。
このように、社会保険の調査は数年に1度の頻度で行われ、様々な資料を徹底的に確認されますので、1度当たったから大丈夫というものではありません。指摘があった場合は強制的に遡って訂正されるなど、そのダメージも非常に大きいです。普段から適切な労務管理を意識し、調査時に焦らないような体制を構築していくことが重要となります。
社会保険労務士 八尋 慶彦