従業員に対して必要な訓練や研修を受講させ、将来にわたって活躍できる人材を育てていくことは、企業経営の安定に繋がります。しかし、それには当然費用が発生します。そこで今回は、従業員に対して職務に関連する訓練や研修を受講させた際に活用できる人材開発支援助成金(一般訓練コース・特定訓練コース)についてご紹介していきます。
※令和4年12月時点の要件に基づいております。
一般訓練コース・特定訓練コースの概要
人材開発支援助成金(一般訓練コース・特定訓練コース)は、職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を正社員(無期雇用かつフルタイムの従業員)に受講させた場合に支給されます。助成金額は次の通りです。
《一般訓練コース》
□ 経費助成:訓練に要した経費の30%
□ 賃金助成:1人1時間あたり380円
《特定訓練コース》
□ 経費助成:訓練に要した経費の45%
□ 賃金助成:1人1時間あたり760円
※賃金助成及び経費助成に関しては、それぞれ上限金額が設けられています。
※大企業の場合は金額が異なりますのでご注意ください。
※パート(正社員に比べて労働時間が短い従業員)に対して職業訓練を実施する場合は、「特別育成訓練コース」の対象となることがあります(詳細は次回詳しく解説します)。
一般訓練コース・特定訓練コースの主な要件
人材開発支援助成金(一般訓練コース・特定訓練コース)を受け取るための主な要件は下記のとおりです(その他にも細かな要件があります)。
- 事業所内で訓練に関する計画を立て、職業能力開発推進者を選任していること
- 職務に関連した専門的な知識や技能を習得させることを目的とする訓練であること
- OFF-JTにより実施される訓練であること
- 一連の実訓練時間数が20時間以上(特定訓練コースの場合は10時間以上)であること
- 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
- 訓練を受講する時間に対しても賃金を全額支払っていること
- 助成金の支給申請日までに、訓練に要した費用を全額会社が負担していること
- (特定訓練コースの場合のみ)受講する従業員が入社5年以下かつ35歳未満であること
対象とならない訓練の例
以下に記載するような訓練や研修は「専門的な知識や技能の習得を目的とする訓練とは言えない」として人材開発支援助成金の対象外となります。
① 仕事に間接的に必要となる知識や技能を習得させる内容の訓練
(例)普通自動車免許の取得のための講習など
② 職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる研修
(例)接遇・マナー講習など
③ 趣味教養を身に付けることを目的とする講習
(例)日常英会話講習、話し方講習など
④ 普段の業務として遂行されるものを目的とする研修
(例)自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明、自社が扱う製品やサービス等の説明など
⑤ 職務に直接関連しない研修
(例)研究発表会、見学会、座談会など
⑥ 法令等で講習等の実施が義務付けられている講習
(例)労働安全衛生法に基づく講習、道路交通法に基づき実施される法定講習など
⑦ 知識や技能の習得を目的としない研修
(例)意識改革研修、モラル向上研修など
⑧ 資格試験や適性検査
(例)講習を受講せずに試験を受けることができる資格など
「一般訓練コース・特定訓練コース」の活用をお考えの場合の注意点を記載いたします。
- 賃金助成は、所定労働時間内に実施した訓練に対して助成されます。所定休日に実施した場合や残業して訓練を実施した場合、その時間分の賃金助成はありません。
- 体面での訓練だけでなく、オンラインでの訓練も対象となりますが、質疑応答ができることが条件となります。
人材開発支援助成金(一般訓練コース・特定訓練コース)の申請をお考えの場合には、最新の情報を確認したうえで取り組んでいただくようお願いいたします。
社会保険労務士 八尋 慶彦