今回は、キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)についてご紹介していきます。
※令和4年10月時点の要件に基づいております。
賞与・退職金制度導入コースの概要
キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)は、非正規社員(有期雇用労働者・無期雇用労働者)の処遇改善のため、非正規社員に適用される賞与制度又は退職金制度もしくはその両方の制度を就業規則に新たに設け、賞与を支給又は退職金の積立てを実施した場合に支給されます。助成金額は次の通りです。
□ 380,000円 (いずれか一方のみ導入した場合)
□ 540,000円 (両制度を同時に導入した場合)
※1事業所あたり1回のみとなります(雇用保険適用事業所単位)。
※大企業の場合は金額が異なりますのでご注意ください。
賞与・退職金制度導入コースの主な要件
キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)を受け取るための主な要件は下記のとおりです(その他にも細かな要件があります)。
- 全ての非正規社員に適用される就業規則に「賞与制度」、「退職金制度」のいずれか一方又は両方を新たに設けていること
- 制度を設けた日の前日から3か月以上前の日から新設日以降6か月以上の間継続して、非正規社員として勤務していること
- 「初回の賞与支給日」又は「初回の退職金積立日」以降6か月間、雇用保険被保険者として雇用していること
- (賞与制度を導入した場合)全非正規社員(雇用保険被保険者以外を含む)に、6か月分相当として50,000円以上の賞与を支給していること
- (退職金制度を導入した場合)全非正規社員(雇用保険被保険者以外を含む)に、「1か月相当分として3,000円以上を6か月分」又は「6か月分相当として18,000円以上」の退職金を積み立てていること
- 制度新設後の賃金(基本給や諸手当など)を、制度新設前に比べて低下させていないこと
支給申請の流れ
① キャリアアップ計画の作成・提出
② 就業規則に「賞与制度」、「退職金制度」のいずれか一方又は両方を新たに設ける
③ 賞与を支給又は退職金の積立て
④ 支給申請
キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)は、非正規社員にも賞与や退職金制度を導入し、それに基づいて支給することによって非正規社員の処遇改善を図ることを目的としています。そのため、雇用保険に加入しているか否かにかかわらず、全非正規社員に支給しなければなりません。
就業規則に賞与制度を新たに設ける場合には、「賞与を支給する場合がある」という定め方では不十分であり、「原則として賞与を支給する」といった定めが必要になります。なお、会社に正社員が1人もおらず、パートやアルバイトだけの場合でも雇用保険被保険者がいれば当該コースの活用は可能です。
賞与の支給金額については、正社員の賞与算定方法と同一である必要はなく、非正規社員独自の算定方法で決定した金額を支給することができます。しかし、一度就業規則に定めてしまうと、原則として廃止することはできませんのでご注意ください。
キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)は、現状あまり活用されていないようですが、正社員以外にも賞与や退職金を支給したい場合には検討してみるのも良いかもしれません。
キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)の申請をお考えの場合には、最新の情報を確認したうえで取り組んでいただくようお願いいたします。
社会保険労務士 八尋 慶彦