従業員が育児休業を取得する場合、その従業員が一時的に抜ける穴をカバーしなければなりません。その際に、在籍している従業員で業務を分担してカバーする場合もあれば、新しく人を採用してカバーする場合もあります。従業員が育児休業に入るタイミングと職場復帰するタイミングで活用できる助成金もありますが、今回は、育児休業取得者の代わりに人を採用して業務をカバーした場合に活用できる助成金について解説していきます。

※令和6年4月現在の情報に基づいております。
※助成金は随時要件が変更となりますので、申請の際は最新の情報をご確認ください。

両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)の概要

両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)は、育児休業を取得する従業員の代わりとして新たに人を採用し、育児休業取得者の業務を代替した場合に活用することができる助成金です。また、この助成金の対象となる育児休業取得者は女性に限られているわけではないため、男性労働者が育児休業を取得する場合にも活用することができます。
なお、この助成金は受給することができる金額が一律で決まっているものではなく、育児休業期間中に業務代替した期間に応じて助成金額が決まり、具体的には以下の通りとなっております。

7日以上14日未満9万円
14日以上1か月未満13.5万円
1か月以上3か月未満27万円
3か月以上6か月未満45万円
6か月以上67.5万円
※1年度(4/1~3/31)に原則として10人まで申請が可能です。
※育児休業取得者が有期雇用労働者の場合、上記の金額に10万円が加算されます。
ただし、業務を代替した期間が1か月以上の場合のみ対象となります。
※加算のみの受給はできません。

育休中等業務代替支援コース(新規雇用)の主な要件

両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)を活用するためには、以下に掲げる全ての要件を満たしていなければなりません。(その他にも細かな要件があります。)

☑事前に計画を作成し、労働局に届出を行い、ホームページなどで計画内容の公表を行っていること

☑育児休業取得者の代わりに同様の業務を行う者(代替要員)を新たに雇い入れること
・育児休業取得者が複数の業務を兼務している場合、その一部のみを代替する方でも問題ありません。
・育児休業取得者に対して「業務に係る手当」が支給されている場合、代替要員にも同様に支給する必要があります。
※業務に係る手当とは、例えば、育児休業取得者が看護師等の有資格者で、その資格が無ければ業務を行うことができない場合(看護師業務を代替する場合)に、代替要員へ支給する資格手当のようなケースを言います。
・原則として育児休業取得者と同じ事業所で勤務している必要があります。
・所定労働時間が育児休業取得者の1/2以上である必要があります。
・育児休業取得者の妊娠の事実を知った日以降に、新しく代替要員を雇用している必要があります。

☑雇用保険に加入している育児休業取得者が7日以上の育児休業を取得していること
・女性労働者の場合、産後休業を含めて7日以上であれば要件を満たしますが、法律上産後8週間は就業禁止であるため、基本的に2か月間は育児休業を取得していることになります。

育児休業の開始日前までに就業規則(育児休業規程)を整備していること
・最新の法改正内容の反映等を行っている必要があります。

育児休業期間が1か月以上である場合には、更に次に掲げる取組みを実施していることが必要です。

☑育児休業取得者を原職に復帰させることについて就業規則に明確に定めており、かつ実際に原職に復帰させていること
・育児休業前に従事していた勤務場所で同様の業務に従事させている必要があります。ただし、通勤距離や通勤時間の問題等の合理的な理由に基づき本人が希望した場合には、今までと異なる事業所で勤務することになったとしても原職に復帰したものとみなされます。
・職制上の地位が今までに比べて下回っていないことが必要です。例えば、役職者として役職手当が支給されていた場合、復帰後も役職者として役職手当を支給しなければなりません。

☑職場復帰後、雇用形態や給与形態の不合理な変更を行っていないこと
・正社員の従業員が育児休業後、パートとして職場復帰する場合には、たとえ本人の希望に基づくものであったとしても認められません。

育児休業取得者の代替要員を新たに採用した場合の助成金は以前からありましたが、令和6年1月1日以降、要件が緩和され、より活用しやすいものとなりました。しかし、助成金を受給するためには多くの要件が設定されており、また、管理する期間も長期間にわたります。産休・育休に関する助成金を活用したい、該当するかどうか知りたい場合には、お気軽にお問い合わせください!

社会保険労務士 八尋 慶彦