前回ご紹介した人材開発支援助成金(一般訓練コース・特定訓練コース)は、主に正社員に対して職務に関連する訓練や研修を受講させた際に活用できる助成金でしたが、今回は、正社員以外(パートなど)に対して、正社員への転換や処遇を改善することを目指して、職務に関連する訓練や研修を受講させた際に活用することができる助成金となっています。
※令和4年12月時点の要件に基づいております。
特別育成訓練コースの概要
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)は、職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を非正規社員(無期雇用かつフルタイムの従業員以外の者)に受講させた場合に支給されます。助成金額は次の通りです。
□ 経費助成:訓練に要した経費の60%(訓練後に正社員転換した場合は70%)
□ 賃金助成:1人1時間あたり760円
※賃金助成及び経費助成に関しては、それぞれ上限金額が設けられています。
※大企業の場合は金額が異なりますのでご注意ください。
特別育成訓練コースの主な要件
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)を受け取るための主な要件は下記のとおりです(その他にも細かな要件があります)。
- 1訓練あたり1年以内の訓練であること(1年を超える訓練は対象外となります)
- 職務に関連した専門的な知識や技能を習得させることを目的とする訓練であること
- OFF-JTにより実施される訓練であること
- 一連の実訓練時間数が20時間以上であること
- 訓練対象者が、訓練の終了日又は助成金の支給申請日に雇用保険に加入していること
- 訓練対象者が、正社員として雇用することを予め約束して雇い入れられた者でないこと
- 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
- 訓練を受講する時間に対しても賃金を全額支払っていること
- 助成金の支給申請日までに、訓練に要した費用を全額会社が負担していること
対象とならない訓練の例
以下に記載するような訓練や研修は「専門的な知識や技能の習得を目的とする訓練とは言えない」として人材開発支援助成金の対象外となります。
① 仕事に間接的に必要となる知識や技能を習得させる内容の訓練
(例)普通自動車免許の取得のための講習など
② 職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる研修
(例)接遇・マナー講習など
③ 趣味教養を身に付けることを目的とする講習
(例)日常英会話講習、話し方講習など
④ 普段の業務として遂行されるものを目的とする研修
(例)自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明、自社が扱う製品やサービス等の説明など
⑤ 職務に直接関連しない研修
(例)研究発表会、見学会、座談会など
⑥ 法令等で講習等の実施が義務付けられている講習
(例)労働安全衛生法に基づく講習、道路交通法に基づき実施される法定講習など
⑦ 知識や技能の習得を目的としない研修
(例)意識改革研修、モラル向上研修など
⑧ 資格試験や適性検査
(例)講習を受講せずに試験を受けることができる資格など
「特別育成訓練コース」の活用をお考えの場合の注意点を記載いたします。
- 賃金助成は、所定労働時間内に実施した訓練に対して助成されます。所定休日に実施した場合や残業して訓練を実施した場合、その時間分の賃金助成はありません。
- 体面での訓練だけでなく、オンラインでの訓練も対象となりますが、質疑応答ができることが条件となります。
- 7年以上在籍している従業員と在籍年数3年未満の従業員が同じ内容の訓練を受講する場合、訓練内容が在籍年数で習得できない知識・能力の向上を目的とするものである必要があります。
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)の申請をお考えの場合には、最新の情報を確認したうえで取り組んでいただくようお願いいたします。
社会保険労務士 八尋 慶彦